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<<   作成日時 : 2007/03/06 22:51   >>

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上海発「世界同時株安」の背景  2007/02/28〜03/5




           木下晃伸(きのした・てるのぶ)
           (株)ファンドクリエーション
          インベストメント・アナリスト






07年2月27日、中国・上海市場を急落を発端とする「世界同時株安」が起こり
ました。前日まで、6年9ヶ月ぶりに1万8,000円の大台を突破するなど好調
に推移していた日経平均も大幅な株安に見舞われました。

一体何が起こったのか?各国マーケットの動きを追ってみましょう。


◎バブル崩壊?10年ぶりの暴落【中国市場】

上海市場総合指数は、05年6月に998で底を打ったあと高騰を続け、07年2月26
日には3,000の大台を突破しました。しかし、翌27日には一転急落し、前日比
8.8%安の 2,771となりました。

その後は反発・反落を繰り返す展開。しかし、全体としては非常に軟調な展開
といえます。

香港ハンセン指数も27日に1.76%の下げを記録。一時は持ち直したものの、3
月5日には前週比4%の下落となるなど、株安の流れはアジアに広がりました。

これまで好調だった中国の市場がこれほど大きく下げたのは、中国政府が株式
の売買益に対する課税を強化するとのうわさが流れたためです。課税強化の前
に利益を確定させたい投資家の売りが殺到し、急落につながったのです。

そして、忘れてならないのが中国市場が「過熱」状態にあったということ。私
も以下の通り、自身のメールマガジンの中で何度も中国市場の過熱を指摘して
きました。

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『中国、資産バブルなお警戒(07年1月26日付)』
中国株はすでにバブル的要素をはらんでいるような気がしてならない。

『焦点はどこまで上がるか?(07年1月30日付)』
本日の日経金融新聞『スクランブル』で取り上げられている『上がるか下がる
かではない。焦点はどこまで上がるかだ』というメリルリンチ、新興株式市場
担当のマイケル・ハートネット氏の見解は非常に“危険”に映る。

※詳しくはこちら⇒ http://blog.mag2.com/m/log/0000164032/
----------------------------------------------------------------------

確かに中国は、高い成長率を維持し世界経済における存在感を増しています。
しかし、先ほども述べたように、05年6月に約1,000だった指数が、3年弱後
に3倍にまでなるという過熱状態に対する危機感が強くありました。「3,000
を突破したら売り時」ともささやかれていたのです。


◎9.11世界同時多発テロ以来の下げ幅【アメリカ市場】

欧米の株式市場も上海発の株安の流れを引き継ぐ展開となりました。ロンドン
市場FT株価指数の27日終値は、前日比148.6ポイント安の6286.1と急落。フ
ランス、ドイツの市場でも大幅安となりました。

アメリカにいたっては、ニューヨーク市場のダウ平均株価が、前日比546ドル
安の1万2,086ドルと、9.11同時多発テロ直後以来の下げ幅を記録しました。

欧米市場への株安の伝播は、上海の急落がヘッジファンドを中心とする巨額な
資金を動かす投資家の心理を冷やしたことが要因です。そして、米連邦準備制
度理事会(FRB)の前議長グリーンスパン氏の26日の発言が追い討ちをかけ
ました。グリーンスパン氏の発言は以下の通りです。

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"For example in the U.S., profit margins... have begun to stabilize,
which is an early sign we are in the later stages of a cycle."

例えばアメリカでは、(企業の)利幅が横ばいになり始めている。これは
(景気の)循環の後半にいる初期の兆候だ。
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この発言が、「グリーンスパン氏、米景気後退の可能性を指摘」として広まり
ました。昨年来、アメリカの住宅着工件数が予想を下回るなど、元々景気減退
への警戒感があっただけに、大きなインパクトを与えることとなり、大幅安と
なったのです。


◎1万8,000円の大台突破はひと時の夢?【日本市場】

上海を発端に、欧州、アメリカを巡った株安の流れは、当然、日本の株式市場
にも直撃しました。

28日の東京市場では、前日の海外市場の株安の流れを受け、幅広い銘柄で売り
が殺到。日経平均の終値は前日比515円安の1万7,604円と、あっさりと1万
8,000円の大台を割り込みました。06年6月の614円以来の大きな下げ幅です。

元々、米市場の下げに連動することが多い日本市場。前日のニューヨーク市場
が大きく下げていたので、ある程度の下げは予想できました。しかし、これほ
どまで下げ幅が大きくなったのは、このところの株高で、利益確定の売りが出
たことも関係しているでしょう。

また、タイミングが悪いというべきか、28日の朝刊一面で「日興、上場廃止へ」
との報道が流れ、証券株なども下落しました。

そして、世界的な株安とともに円高も進行。2月21日の日銀利上げ以降も1ド
ル120円台で推移していた円は、28日に一気に買われ118円台をつけ、3月5日
には115円台に。対ユーロでも5日連続で続伸し、1ユーロ=151円半ばの展開
となりました。

以前も述べましたが、通貨は国力を表す指標のひとつ。円高は望ましいともい
えます。しかし、現在の日本経済が円安を背景に業績を伸ばす輸出産業に支え
られている側面が強いため、円高の進行は株価を引き下げる要因となります。
その結果、日経平均は5日までの1週間で1,570円近く下落したのです。

代表的な輸出銘柄であるトヨタ(7203)の株価をは、2月28日に前日比320円
安の8,020円となり、3月5日には7,460円まで急落しています。

こうした急速な円高の背景には、円キャリー取引の縮小があります。

以前にも解説した通り、円キャリー取引とは、金利の安い円を調達し、利回り
のよいほかの国で運用すること。円をほかの通貨に換える際に円売りが発生す
るため円安となります。2月28日以前の円安の大きな要因でした。

しかし、ここにきて投資家の心理が冷え込み、円キャリートレードを縮小、つ
まり、他国通貨の投資を引き上げ、円を返す(円を買う)という動きをみせた
のです。これは、今後どうなるか不透明だから、とにかくポジションを解消し
てじっとしておこうということです。


◎投資のタイミングを読み解くヒント「騰落レシオ」

私は、当面は円安傾向が続くと考えていました。それは、たとえ日銀が利上げ
を実施しても、世界と比較すると日本の金利はまだまだ低く、円キャリー取引
の縮小要因にはならないと考えていたからです。

しかし、実際は世界同時株安を受け、投資家のリスク許容度が減退してしまっ
たのです。ここまでの動きは予想できませんでした。

では、今後の投資をどうすればよいのか。私は騰落レシオを参考にしながら投
資を行っています。騰落レシオとは、上場企業の中で値上がり銘柄数を値下が
り銘柄数で割って指数化したもの。簡単にいえば、投資参加者の心理が弱気に
振れているか強気に振れているかを判断できる指標です。

騰落レシオはこちらで確認いただけます。
http://www.opticast.co.jp/cgi-bin/tm/chart.cgi?code=0188

騰落レシオが75%を割ったときには、値下がり銘柄数が多く、投資参加者が弱
気である、つまり株価が下落し割安局面となったと判断し、買う。一方で、
130%を超えたときには、逆に値上がり銘柄数が多く投資参加者が強気である
と考えられるため、売る。

私はこの投資方法をテレビや雑誌、書籍等を通じてお伝えしてきました。これ
は、自身のファンドマネジャーとしての経験や、計数的な検証から得られたノ
ウハウです。

実際、年初より騰落レシオは110%から120%前後をウロウロしており、投資参
加者の心理がまだまだ楽観的であることを示唆していました。そして、現在、
88.9%となっていることから、もう一段の下落があってもおかしくはない、と
考えています。逆に、75%割れまで待つのであれば、絶好の投資タイミングが
やって来る可能性があると考えているのです。

たしかに、これだけ急激な下落を目の当たりにすると「怖い」と思う方も多い
でしょう。一方で、より割安で投資するチャンスがやってきたともいえるので
はないでしょうか。どう考えるかは、投資家それぞれの考えや経験、投資資金
によっても変わってきます。

下落時期こそ、投資家の哲学が問われます。目をつむることなく、何が正しく
て何が間違っていたのか、自省するタイミングではないでしょうか。

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下落圧力は上昇圧力よりも強くて早い、という経験を何度もしてきました。だ
からこそ、新日鉄が高値更新しようが、景気の良い話を聞こうが、年初より一
貫して「弱気」とお話してきたのです。でも、もうすぐ「強気」に転じるタイ
ミングが来る、と思っているのも事実。今は、騰落レシオという投資家の心理
指標を参考に、いずれ来る投資タイミングを焦らず待ちたいところです。
                               (木下)
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●木下晃伸(きのしたてるのぶ)
http://terunobu-kinoshita.com/profile/profile.html
インベストメント・アナリスト。1976年生まれ、名古屋市出身。中央三井信託
銀行、三菱UFJ投信を経て、現在は独立系資産運用会社(株)ファンドクリエ
ーション所属。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。

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